【弁護士コラム】類型別-SNSにおける企業炎上とその対策

米盛弁護士

米盛泰輔 弁護士

SNS炎上

最終更新日 2023.09.30

1.はじめに~SNSにおける企業炎上とその対策の類型

昨今、SNSの利用は、市民生活のみならず、企業活動においても、情報の収集や発信のツールとして、一般的なものとなっています。
したがって、企業社会においても、SNSの利用に伴う炎上リスクについては広く認識されていると思われます。
しかしながら、SNSにおける企業炎上の例が後を絶つことはなく、企業に対しては、企業価値を毀損する炎上リスクへの対策が改めて求められています。

企業の「炎上」には、以下の類型があります。
①公式アカウントにおける炎上
②従業員個人のアカウントにおける炎上
③第三者のアカウントにおける炎上

そして、①、②については、事後の対応策に加え、事前の防止策をとることができる一方、③については、基本的に事後の対応策しかとり得ないという相違があります。

企業が炎上リスクを効果的に低減するためには、このような炎上と対策の類型ごとのポイントをおさえることが重要であるため、本稿においても、以下、このような類型に沿って解説します。

2.「①公式アカウントにおける炎上」への対策

(1)事前の防止策

まず、公式アカウントにおける炎上リスクとして、どのようなものがあるかを洗い出す必要があります。
一般的には、以下のようなものが考えられます。

(i)第三者の権利(著作権、肖像権等)を侵害する投稿
(ii)法令(景表法、薬機法等)に違反する投稿
(iii)不快感(差別的表現、時事問題に関する不謹慎なコメント等)を与える投稿
(iv)担当者が自分の個人アカウントと間違えたことによる誤爆投稿

自社の公式アカウントの内容や他社の炎上事例に照らし、慎重な検討を要します。

次に、そのような炎上リスクが現実化することを防止するため、公式アカウント運用ポリシーを整備する必要があります。
具体的には、以下を規定します。

  • アカウント自体の管理(ID・パスワードの管理、アクセスする端末の限定等)
  • 個々の投稿の管理(投稿内容に関するガイドライン、投稿の承認手続等)

さらに、炎上には以下の3種類があります。

①公式アカウントにおける炎上
②従業員個人のアカウントにおける炎上
③第三者のアカウントにおける炎上

これらの炎上に共通するポイントとして、炎上の予兆を察知するためにGoogleアラートを利用したり、専門の業者に依頼したりして、日ごろから各種SNSをモニタリングしておくことが望ましいといえます。

(2) 事後の対応策

公式アカウントにおける炎上が発生してしまった場合、その原因となった投稿の削除に加え、多くの人に不快感を与えたことについて(第三者の権利侵害や法令違反があった事案ではそのことについても)、プレスリリースを出す等して(迷惑を直接受けた人がいる事案ではその人にまず謝罪した上で)謝罪する必要があります。

その中で、事実経過や原因・再発防止策についてどこまで詳しく説明するかについては、事案の重大性に応じて検討することとなります。
事態が収束するまでの間は、公式アカウントにおける新たな投稿については、「反省していない」という批判を招かないよう、慎重な検討を要します。

なお、先に提示した以下の3種類の炎上について。

①公式アカウントにおける炎上
②従業員個人のアカウントにおける炎上
③第三者のアカウントにおける炎上

これらに共通する重要項目として、以下が挙げられます。

  • 対応策を決定するに先立ち、投稿内容の確認や投稿者・社内関係者へのヒアリングによって正確な事実関係を把握
  • 投稿内容のPDF化やヒアリング結果の陳述書化
  • 製品クレーム事案等では現物の確保によって証拠を保存しておく
  • メディア等からの問合せ対応の窓口を決めておく

3.「②従業員個人のアカウントにおける炎上」への対策

(1) 事前の防止策

まず、従業員に対し、個人のアカウントでも企業を炎上させるリスクについて、教育・研修をする必要があります。
具体的には、以下が挙げられます。

(i)企業や関係者の名誉・信用を毀損する投稿(いわゆる「バイトテロ」等)
(ii)業務上知った秘密・個人情報を漏洩する投稿
(iii)プライベートだが不適切な投稿をして所属企業を特定されるといった炎上リスクについて、実際の炎上事例も参照しつつ、周知徹底を図る
(iv)炎上を起こした場合の懲戒処分や民事・刑事上の責任について説明

また、炎上を起こした従業員の責任を問えるよう、以下のような対策も必要となります。

  • 就業規則の関連規定(貸与機器による投稿の禁止、モニタリング、懲戒事由等)を整備する
  • 秘密保持に関する誓約書を提出させる

さらに、強制力を有する就業規則等とは別に、従業員を啓蒙するためのSNSガイドラインを設けることも考えられます。

(2) 事後の対応策

まず、炎上の拡大を抑えるため、炎上を起こした投稿の削除に加え、個人アカウント自体の削除やアクセス制限をするよう従業員を指導する必要があります。

次に、①「公式アカウントにおける炎上」と同様、企業としての謝罪(事案によっては、事実経過や原因・再発防止策の詳細な説明も)をする必要があります。

その上で、投稿の悪質性や企業に及ぼした悪影響の程度に応じ、従業員に対し、懲戒処分、損害賠償請求、刑事告訴の形で責任追及を行うことになります。

4.「③第三者のアカウントにおける炎上」への対策

(1) 事前の防止策

顧客や取引先、あるいはデマの発信者といった第三者は企業のコントロール外にあるため、冒頭で述べたとおり、「③第三者のアカウントにおける炎上」を事前に防止することは基本的に困難です。

ただ、不適切なクレーム対応や取引先に対するハラスメントを投稿されるといった事案については、SNSに投稿されるリスクがあることを認識しつつ、日ごろから誠実な対応を心がけることが防止に繋がります。

(2) 事後の対応策

まず、第三者の投稿が事実に反しているのであれば、公式アカウントやプレスリリースを通じ、正確な情報を発信する必要があります。
その上で、SNS運営業者所定のフォームによる削除依頼や、プロバイダ責任制限法に基づく送信防止措置依頼をします。

加えて、投稿の悪質性が高く、コストを掛けてでも第三者の責任を追及すべき事案であれば、同法に基づく発信者情報開示請求、損害賠償請求、刑事告訴という法的措置を講じることになります。

このうち、発信者情報開示請求については、2020年12月に公表された、総務省の「発信者情報開示の在り方に関する研究会 最終とりまとめ」(※) が、従前の開示手続の問題点を解決するための新たな裁判手続の創設を提言していることが注目されます。
https://www.soumu.go.jp/main_content/000724725.pdf

これに対し、第三者の投稿が事実であり、企業として反省すべき点があるのであれば、その点についてプレスリリース等で謝罪し、事案の重要性に応じて事実経過や原因・再発防止策についても詳しく説明する必要があります(投稿者に迷惑をかけた事案であれば、投稿者にも謝罪が必要です)。

以上

著者:米盛泰輔 弁護士
■OMM法律事務所
URL:https://omm-law.com/


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    この記事を書いた人

    米盛泰輔 弁護士

    経歴:慶応義塾大学法学部・ハーバードロースクール卒業。1999年弁護士・2010年ニューヨーク州弁護士登録。柳田国際法律事務所パートナー、(株)ベルシステム24ホールディングス理事等を経て、現在は主に中堅・ベンチャー企業にM&A、国際取引、コンプライアンス等に関するアドバイスを提供。 著書・論文:「合弁会社における少数派株主保護とデッドロック解消のためのプランニング」 (旬刊商事法務2017年4月25日号)、「交渉術・心理学でUP!契約書交渉のキホン」(ビジネス法務2018年7月号~11月号)等。


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