ネット上の誹謗中傷を弁護士が削除 犯人の特定や損害賠償請求もできる

SORILa編集部

Justice protection concept.

最終更新日 2024.04.23

ネット上の違法性が高い誹謗中傷に対しては、弁護士を通してサイト管理者への削除要請ができます。また、その投稿によって実害が出た場合は、誹謗中傷の発信者を特定して損害賠償請求をしたり、裁判所に訴えたりすることも可能です。本記事ではネット上の誹謗中傷について弁護士に相談した場合の対応策などを解説します。

ネット上の書き込みの削除を請求

インターネット上で悪質な誹謗中傷などの風評被害に遭った際、真っ先に考えるべきなのは問題の書き込みを早急に削除することでしょう。というのも、今はtwitterなどのSNSの普及によって、情報はあっという間に広がってしまうためです。ネット上に投稿が公開されている時間が長ければその分だけ多くの人に閲覧されることになり、コピーなどによる拡散のリスクが上がってしまいます。

とはいえ、被害者が個人としてプロバイダにコメントの削除を要請しても、対応してもらえない場合が多々あります。そんなときにおすすめしたいのが、弁護士に依頼して法律に則した削除手続きをしてもらうことです。以下では、弁護士がネット上の書き込みを削除するために取る措置について解説します。

送信防止措置依頼

「送信防止措置」とは、誹謗中傷された個人や企業の依頼に応じて、SNSやWebサイトの管理者等が問題の書き込みを削除する措置のことです。送信防止措置は「プロバイダ責任制限法」という法律によって、裁判所などの命令があった場合にサイト管理者が果たすべき責任として法律的に定められています。

ネット上で誹謗中傷などの被害を受けた個人や企業、そしてその代理人である弁護士は、この送信防止措置を実施するようにサイト管理者に依頼することが可能です。とはいえ、ネット上の書き込みも基本的には「表現の自由」が保障されていますので、弁護士が送信防止措置依頼をしても、必ずしもサイト管理者が応じるとは限りません。それゆえ、送信防止措置依頼をしてもコメントが削除されなかった場合、弁護士はより法的強制力の強い措置を取ることになります。

削除仮処分

送信防止措置依頼を行っても該当の書き込みが削除されない場合、弁護士は裁判所に申し立てをして「削除仮処分」の命令を出してもらうように働きかけます。

すでに触れたように、ネット上の不適切投稿はすぐに削除される必要がありますが、裁判手続きが全て完了するまでには半年や一年など長い期間が必要です。そこで活用されるのが、裁判をしなくても裁判に勝訴したときと同じ状態を確保できる「仮処分」という方法です。仮処分なら早ければ数週間で命令が出るため、迅速にサイト管理者へ問題の不適切投稿を削除させることができます。

仮処分とはいっても法的な強制力はすでに備えているため、サイト管理者が命令に応じない場合は強制執行の手続きも可能です。強制執行の申し立てをされると、サイト管理者は投稿を削除するまで、裁判所が命じる金額をずっと払い続けなければいけなくなります(間接強制)。また、仮処分の申し立てを裁判所にしたからといって、必ずしも本訴訟にまで移行するわけではありません。上述のように仮処分の時点で問題の投稿は削除されますし、本格的に裁判で争ってまでサイト管理者が悪質な投稿を掲載するメリットは薄いので、それ以上の手続きは不要であることがほとんどです。

裁判所に対して仮処分命令の申し立てをすることは個人としてもできますが、発令してもらうためには煩雑な手続きを処理し、問題の投稿の違法性を疎明しなくてはいけません。それゆえ、確実に仮処分命令を出してもらうためには、やはり弁護士に依頼するのが一般的です。

Judge with gavel on table

投稿者を突き止めて慰謝料を請求

誹謗中傷などの不適切投稿は、被害者の社会的立場や経済状況に大きな被害を与える場合もあります。そうした場合、被害者としては投稿者を特定して慰謝料や損害賠償請求したいと考えることもあるでしょう。弁護士は依頼人のそうした希望に応えて、投稿者を突き止めるために「発信者情報開示請求」を行えます。以下では、この発信者情報開示請求の基本概要や手続きの流れについてご説明します。

発信者情報開示請求

周知のとおりインターネットの書き込みは匿名性の高いものが多いため、人権侵害などに当たる違法な投稿で被害を受けた際、損害賠償請求や刑事告訴をするためには、まず投稿者の特定から始める必要があります。そのために必要な手続きが発信者情報開示請求です。発信者情報開示請求を行うためにも、やはり問題の投稿が違法性を有するものだという法的な根拠が必要になります。

発信者情報開示請求手続きの流れ

発信者情報開示請求は、誹謗中傷が投稿された爆サイや5chなどのWebサイトやtwitterなどのSNSの管理者、あるいはプロバイダ等に対して行うものです。プロバイダには、投稿者のIPアドレスやタイムスタンプなど、ユーザーがどこのどんなデバイスから投稿を行ったか特定できるデータが保存されています。つまり、弁護士は発信者情報開示請求を行うことによってプロバイダからこれらの情報を入手し、投稿者の氏名や住所などを割り出していくのです。

とはいえ、弁護士が発信者情報開示請求を行ったとしても、必ずしも投稿者の特定ができるわけではありません。たとえば、IPアドレスなどのユーザー情報はいつまでもプロバイダに残されているわけではなく、およそ3ヶ月から半年ほどでログが消されてしまうのです。それゆえ、誹謗中傷を受けた時期から一定期間以上経過していた場合は、弁護士が発信者情報開示請求をしたところで技術的に投稿者の特定が不可能なケースもあります。もし投稿者の特定を考えている場合は、早期に弁護士に相談することが不可欠です。

損害賠償請求

投稿者を特定したら、具体的な法的措置に移ることが可能となります。

誹謗中傷を受けた被害者は、精神的苦痛を受けたことによる慰謝料を加害者に請求できます。また、風評被害によって会社の売上が落ちたなどの経済的損害を被った場合は損害賠償を請求する権利も民法で認められています。加害者はたとえ過失であっても、こうした賠償責任を果たさなければなりません。なお、損害賠償は原則的に金銭で請求されます。

刑事告訴も可能

ネット上の誹謗中傷は名誉毀損罪や侮辱罪、あるいはその両方に当たる可能性があります。もしコメントの中に「殺してやる」「痛い目に遭わせる」などの発言があった場合は、脅迫罪に問える可能性もあるでしょう。こうした悪質な誹謗中傷に対しては、民事裁判だけでなく刑事告訴もできます。

とはいえ、ネット上のコメントを起訴にまで持ち込むにはいくつものハードルがあります。まず、刑事告訴には、被害を受けたという確かな証拠が必要不可欠です。自分への誹謗中傷のコメントなど目にしたくないでしょうが、法的手続きに乗せるためには、そうしたコメントをプリントアウトしたり、スクリーンショットに撮ったりして、しっかり記録として保管してください。

また、誹謗中傷の事実があったとしても、被害者自身が告訴を希望しなければ警察は捜査を行いません。それゆえ、たとえば知人がネット上で風評被害を受けているのを目にしたとしても、被害者本人に黙ったまま警察に捜査をするよう働きかけることはできないのです。

さらに、しっかり証拠資料を揃えて警察に被害届を提出した場合も、「事件性が薄い」と警察に判断されてしまったら、捜査がされないケースもあります。対応してもらえる可能性が高いのは、たとえば誹謗中傷コメントの内容から身の危険を感じさせるような要素が強く見受けられた場合などです。

ただし、捜査の結果、犯人を特定し、犯行を立件したとしても起訴にまで至ることは珍しく、多くの場合は不起訴(起訴猶予)に落ち着いてしまうのが実情です。起訴される場合でも略式で罰金刑になることが多く、懲役刑が科されることは稀です。

それゆえ、刑事告訴を検討している場合は、希望通りの結果にならない可能性が高いことも覚悟の上で決断する必要があります。

弁護士による誹謗中傷対策の費用相場は?

弁護士に誹謗中傷対策を依頼する場合には、弁護士費用が必要です。もし裁判にまで持ち込む場合は、さらに裁判費用もかかります。
弁護士費用は弁護士事務所やケースによって様々ですが、およその目安としては下記のように見積もっておくといいでしょう。

  • 削除請求 着手金約3万円~
  • 送信防止措置依頼 着手金約3万円~
  • 削除請求の仮処分 着手金約30万円~
  • 発信者情報開示請求 着手金約30万円~
  • 損害賠償請求(裁判) 着手金約20万円~
  • 刑事告訴  着手金約20万円~

込み入った法的措置が必要になるほど高額になっていくのが一般的です。また、誹謗中傷の投稿件数が多かったり、古かったりすると依頼の難度が上がるため、必要費用が変動する場合もあります。

さらに、依頼が成功した場合は別途成功報酬も必要になってきます。損害賠償請求の場合は基本的に賠償金から一定割合(16%程度)を支払うことが多いでしょう。また、刑事告訴の場合は、問題の投稿者が起訴されることによって成功とみなされます。

いずれにせよ、弁護士費用はケースバイケースで大きく変わってきます。弁護士に対応を依頼する場合は必ず事前に料金体系についてしっかりと説明を受けましょう。

まとめ

本記事ではネット上の誹謗中傷について弁護士に相談した場合、どのような対策を取れるか解説しました。弁護士に依頼すると、問題の投稿を速やかに削除できる可能性が高まるほか、投稿者を特定したり、損害賠償請求を行ったりできます。弁護士に相談する際には実績や費用についてしっかり確認することが大切です。

ただし、ここで注意したいのは、誹謗中傷の度合い次第では違法性が認められず、弁護士では対応できないケースもあることです。そうした場合は、技術的アプローチによってネットトラブルの被害を抑えられるエフェクチュアルのサービスを利用するのがおすすめです。

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